過去

yozef2005-04-01

溢れんばかりのエネルギーをどこに向ければいいのか分からず
夜の街に出ては暴れまわっていたあの頃。
街一番の鼻つまみ者。天使の顔をした悪魔。
そんなあだ名ならいくらでもあった。
そんなある日、俺はサックスに出会う。
魅惑の音を出す金の斧。一目惚れだった。
その日から俺は生まれ変わった。不良仲間とも縁を切り
人に迷惑をかけることを一切やめた。
ひたすらサックスに夢中になる毎日。
でも周囲は認めてくれなかった。
「あいつがそう簡単に改心するもんか」
「楽器なんかただの気まぐれだ」
そう言う奴らに、ずいぶん嫌がらせや妨害もされた。
でも俺は反撃しない。大丈夫、いつかきっと分かってくれる。
それに彼らは俺が迷惑かけた連中。これも自業自得だ。
雑音をよそに俺は練習にはげんだ。
そして最後の演奏会。いつも通り客はほとんどいない。
それはそうだ。俺の出てる演奏会に誰が来るもんか。
でも演奏の出来は今までで最高だった。これで悔いは無い。
楽屋に戻った俺の目に最初に飛び込んできたのは
花束の山だった。一体誰が…?「いい演奏だったよ」
振り向くとそこにいたのは沢山の知った顔。
I田にU原、N野さん。他にも大勢。そして…校長…。
俺を恨んでいて、最後まで俺を認めてくれなかった人たち。
「……ありがとう…」初めて俺は心からの涙を流した。
サックスに流れ落ちた涙は金色に輝いていた…。


はい、全部嘘です。
将来俺の伝記がでるとしたらこれぐらい脚色してほしいな
っていうだけの話です。